ニセコ町


ニセコ町 2022–2025

予算・議事録から読み解く「課題解決力」の実態

— 進捗しない論点と、無駄金を生む構造 —


0. 国創シンクタンクの「自治体監査クエスト」

本記事は、国創会の基本理念(国創シンクタンク構想)に基づく、自治体監査・行政評価の実践記事です。

  • 公式資料を突き合わせて 課題を特定
  • 論点の「未クローズ」を 可視化
  • 解決策(政策提言) まで出す

思想の全体像:

参加:

注意:本記事は公開資料の範囲で「監査上のリスクシグナル」を整理するもので、特定の違法行為や不正を断定するものではありません。

はじめに|なぜ「自己評価」を疑うのか

自治体の公式資料(予算書・施策成果報告・議会議事録)は、 基本的に 「やっていること」「前向きな説明」 を中心に構成される。

しかし、

  • 同じ論点が何度も議会で出ている
  • 問題は認識されているのに、解決の定義や期限が示されない
  • 予算は増えるが、成果やコスト妥当性の検証が弱い

こうした兆候が揃うと、 「対応していない」のではなく「対応が可視化されていない」 という、より深刻なガバナンス問題が生じる。

本記事では、 ニセコ町公式サイトで公開されている資料のみを用い、 2022〜2025年の予算・議事録を時系列で突き合わせ、

  • どの論点が「解決していないか」
  • なぜ放置されやすいのか
  • そこに無駄金・既得権益リスクはないか

外部監査の目線で整理する。


分析方法|主観を排除するためのルール

使用資料

  • 当初予算・予算編成方針(令和4〜7年度)
  • 主要施策の成果報告書
  • 議会定例会議事録(一般質問中心)
  • 契約結果一覧(公開PDF)

評価ルール(重要)

  • 「姿勢」「想い」「答弁の熱量」は評価しない

  • 評価対象は以下のみ

    • 数値(予算・契約金額・件数)
    • 手続(期限・責任者・第三者性)
    • 進捗(翌年に回収されたか)

論点①|予算編成:10億円超の乖離が「常態化」している

事実(公式資料より)

  • 2022年度:要求と財源見込の乖離 10億円超
  • 2023年度:乖離 11億円超
  • 2025年度:再び 10億円超 と明記

これは一度きりの例外ではない。 複数年にわたり、同規模の乖離が繰り返し文書化されている。

問題点(構造)

  • 各課が「通らない前提」で要求を積み上げている可能性

  • 査定が「削る作業」になり、優先順位付けが機能していない

  • 結果として

    • 計上漏れ
    • 年度途中の流用・補正
    • 執行管理の緩み が発生しやすくなる

評価

  • 課題認識:○(文書に明記されている)
  • 構造是正:×(乖離規模が改善していない)
  • 課題解決力:

論点②|水道水源地訴訟:問題は「裁判」ではなく「説明設計」

事実

  • 水道水源地を巡る所有権訴訟が発生

  • 議会では

    • 住民が報道で初めて知った
    • 誤解・不安が広がった ことが指摘されている

よくある誤解

「係争中だから説明できない」

これは 半分正しく、半分誤り

  • 証拠・主張内容は出せなくても
  • 手続の時系列、判断基準、次の節目 は説明できる

見えていない点

  • 何を・いつ・どの範囲で説明するのかという 情報公開プロトコル
  • 住民向けFAQや定期更新の設計

評価

  • 問題認識:○
  • 住民リスク管理:△
  • 課題解決力:中〜低

論点③|公益通報・ハラスメント:論点が「未クローズ」のまま継続

時系列の特徴

  • 2024年:公益通報・賞罰委員会を巡る質疑
  • 2025年:同系統の論点が再び一般質問に登場

重要なのはここ

  • 個別事案の是非ではない
  • 問われているのは 「制度として再発防止・透明化されているか」

見えないもの

  • 第三者性(外部窓口・外部調査)
  • 処理フローの公開
  • 匿名化された年次集計

結果として、

「何も変わっていないのでは?」 という印象を、議事録自身が生んでいる

評価

  • 手続実施:△
  • 可視化:×
  • 課題解決力:

論点④|調達・契約:相場妥当性の検証が弱い

着目点(断定はしない)

  • 落札率が 99%前後 の案件が一定数存在
  • 高額インフラ案件が特定分野に集中

これは即「癒着」を意味しない。 ただし 監査上のリスクシグナル ではある。

本来チェックすべき項目

  • 積算根拠(国基準・他自治体比較)
  • 仕様が特定企業向けに狭すぎないか
  • 変更契約で膨らんでいないか
  • 同一業者の継続受注(ロックイン)

現状

  • これらを横断的に検証した形跡は 公式資料からは確認できない

評価

  • 手続の存在:○
  • コスト妥当性検証:△〜×
  • 課題解決力:

総合評価|ニセコ町の「課題解決力」

観点評価
問題の認識高い
進捗管理弱い
可視化弱い
コスト意識部分的
外部監査耐性低〜中

結論 ニセコ町は「優秀だが、仕組みで詰め切れていない自治体」。


政策提言|解決に至らせるために必要なこと

1. 論点タイムラインの公開

  • 議会論点ごとに

    • 初出
    • 宿題
    • 回収状況 を一覧化

2. 予算乖離KPIの導入

  • 要求−財源乖離額
  • 計上漏れ件数
  • 補正理由内訳

3. 調達の「相場比較」義務化

  • 他自治体単価との比較表を添付
  • 高落札率案件は自動レビュー

4. センシティブ案件の説明プロトコル

  • 係争中でも説明できる範囲を事前定義
  • 定期更新ルールを明文化

おわりに

この分析は「ニセコ町を叩く」ためではない。 むしろ、

本当に先進的な自治体になるために、 どこを直せばいいかを可視化する

そのための外部監査視点である。

次にやるべきことはシンプルだ。

  • 議事録を
  • 時系列で
  • 論点別に
  • 進捗で評価する

それだけで、 **「対応していない問題」は自然と浮かび上がる。